溺死

第一報は、昨日の昼休憩中に見たメールでした。

「お爺ちゃんがお風呂で亡くなったって…」
母から電話が来て、妹がスグ送信してくれた様です。

「えぇぇぇ!!!!!!!死んだ?…嘘だぁ〜」
弁当の箸を止め、思わず叫んでしまいました。

私の祖父は97歳。年齢だけ聞けばいつ見送ってもおかしくないです。
でも、あの祖父は違います。絶対に100歳まで楽勝で生きる思いました。
親戚もみんなで「大丈夫でしょ〜」って笑って応援していたくらいです。

私の両親が入浴と食事介護していたものの、一人でトイレに行けます。
食欲が旺盛で、焼き肉も普通にガンガン食べます。
お酒も豪快に飲みます。
加齢による衰えで、少々薬は飲んではいましたが、
入院加療や手術が必要な病気は全くありません。
風邪もめったにひかない祖父でした。

朝6時、父が犬の散歩から帰って来て、祖父の世話をしようと一階に降りると、
いつもの場所にいません。トイレにもいません。

病気知らずの祖父には問題点がありました。

痴呆で徘徊癖があった事…
いったん外に出ると、家がわからなくなってしまうらしいのです。
昼も夜も「じいちゃんがいない!!」と数えきれない程探しています。
連絡先と車代を少し入れた、お守り型のモノを首から下げてました。

行動的な性格故、若い時から家にじっとしているのが難しかったみたい。
なので外で転倒して、救急車で運ばれて、念の為の短期入院も数回ありました。

もしや、また外に?

でもサンダルはあります。

気配はないけど、洗面所を確認。
するとお風呂の曇りガラスから光が漏れているのに気がついたそう。

扉を開けたら、祖父が浴槽の中で亡くなっていました。

救急車を呼んだら、レスキュー系の車も来て、警察も来て…
ご近所がみんな出て来る位に騒然となったそうです。

病院で死亡確認。その後、不審死扱いで父は警察に任意同行。
事情聴取の間、祖父は検死解剖されました。
自宅の現場検証も行われました。

ちなみに解剖費用の85,000円は請求されます。
事件性が無いのは両親が良くわかっていたと思いますが、
突然、事件にされて、出費もあるのです。プチ迷惑。
病死じゃないと、色々大変なんですねぇ〜

単純な溺死と解放されたのは、夕方の事でした。

そこからお寺に電話して、葬儀場で打ち合わせをして…
終わって帰宅したのは夜遅く。雪が積もっていました。

途中から私も駆けつけたのですが、両親は疲労困憊顔。

近所の人が次々訪ねて来て、その応対。

悲しむ暇もない一日を、やっと終えようと遅い夕飯を囲んだ時、
ようやく涙が出ます。

まさか一人で風呂に入るとは思わず、玄関ばかり気にしてた両親。
警察によると、風呂場で亡くなるお年寄りは多いのだそうです。

「風呂に鍵をつければ良かった…」
「残念でたまらない…」
「何で?」
この言葉を繰り返していました。

今回の経験も含め思う事。
老人介護をする際は、火や水回りの事故にお気をつけ下さいませ。
オットの祖父は痴呆でライターをいじりボヤを起こした事あります。

祖父の死顔はとても安らかでした。
溺死は結構ひどい状態になってしまうのですが…
祖父は湯船につかると自力で出る事が出来なくなっていました。
激しく抵抗したり、もがいた痕跡は見当たらなかったと聞いています。
普通にお風呂に入って…そのまま寝ている様な可愛いお顔です。

父が発見した時も、顔はお湯に浸かっていなく、
あ〜ぁ、湯船で気持ち良さそうに寝ちゃってるよと思い、
「じいさん!! そんな所で寝てたら風邪引くよ。起きて!!!!」
そう何度も声をかけ、起こそうとしたのだとか…

推測ではありますが、ばあちゃんが迎えに来たと思います。
生前祖母は旅行が好きで友達と良く出掛けていました。
そんな事から祖母の死を「ばあさんはハワイに行って帰ってこないんだ。」
と時折寂しそうに話していました。
「おとうさん、長い間家をあけてすみませんでした。
お詫びに温泉でも行きましょう。私がお背中流しますから…」
お風呂で気持ちよく寝ていた様に見えたのは、
きっとばあちゃんと風呂に入って、嬉しかったんでしょう。

じいじ…もう会えないんだね。

とっても寂しいな。

福島 いわき育ち、戦争に行き、高度経済成長の混沌で家族を養い、
お酒を好み、政治家に憧れ、人懐っこく、話好きで、皆に愛された。

じいじ…またね。

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